映画

偉大なるアンバーソン家の人々

前作でa citizenの人生丸ごとを(若干26歳にして)完全に掌握するかのような巨大な映画を作り上げたウェルズの「傲慢さ」は、その興行的惨敗と言う打撃を受けても尚とどまることなく肥大成長を続け、遂に若干27歳にしてfamily及び、馬車から自動車へと移行し…

映画を渇望するあまりの辛い夏、『市民ケーン』

最近はストレスが溜まるとさあ今日は帰って映画観ようみたいな、OL的発想に陥るあまりに、『レッドクリフ』だの『ハムナプトラ』だのと言った、いかにもOLたちの好みそうな(偏見か?)ムービーに思わず手が伸びながら、「待てよ」と冷静なシネフィル気取り…

最近ひっそりと観ていた映画の感想

長江哀歌(山峡好人) ジャ・ジャンクー監督 なんかつげ義春とかぶるんだよね。常にランニングシャツで過ごすお世辞にもイケメンと言えない主人公が妻子を捜しに山峡にやってくるんだけども、妻子の家はとうにダムに沈んでしまって、お金がないので、労働し…

バーンアフターリーディング

昔はよかったっていう耳にタコな話、『ファーゴ』は素晴らしい映画だったと鮮烈に思い出したのは『バーンアフターリーディング』のラストのジョンマルコビッチのとった行動が、『ファーゴ』のラストのピーターストーメアのとった行動のほとんどデジャブであ…

夏時間の庭

先日、某友人の結婚式に、日経新聞の「美の美」の関係者がいたので、「このあいだ映画監督の特集やってましたよねほらえーっと」と言って、その超有名映画監督の名前が出てこずに僕がもじもじしていると、彼女がさらっと「アサイヤス?」と言った。正解はミ…

グラン・トリノ/クリント・イーストウッド

これまた初日に観ました。いやー最高です。「これでもう映画に出ない」と公言したイーストウッドは見事に自らをフィルムの中に葬り去ったのです。その遺影、側方から青白い光が差し込み眼光が輝く、に涙を禁じ得ません。久々に男泣きでした。 以下、妄想です…

スラムドッグ$ミリオネア/ダニー・ボイル

海外に行ってホテルでぼーっと意味も判らずテレビとか観ていると、みのもんたでおなじみのクイズミリオネアが全く同じセットで、全く同じ音楽で、全く同じルールで、よく似た外国人の司会者がいて、「Final Answer?」とかやっているのをしばしば見かけるので…

ミルク/ガス・ヴァン・サント

というわけで、「パラノイドパーク」も予習しておいたことだしっていうノリで、観てきました「MILK」!初日です。繰り返しますが、僕はゲイではありません。そして、ガス監督はゲイだったのですね、全然知らなかった。ゲイを公表した人間として初めて公職に…

元禄忠臣蔵

あと、四時間かけて観たのは溝口健二『元禄忠臣蔵』。溝口が「本当に人は斬れないでしょう。」と言って、新藤らが準備した吉良邸討ち入りを撮らなかった、あるいは、原寸大の松の廊下を作った、など数々の伝説で有名。情報局の支援に基づいて、溝口が予算を…

パラノイドパーク

映画は相変わらず観ている。アルモドヴァルと同様に見逃していたのは、ガス・ヴァン・サントの『パラノイド・パーク』。『エレファント』以来確立された手法を踏襲しながら、その内容は「透徹した客観」ではなく、ひたすらに「感傷的」である。もう少し具体…

ボルヴェール帰郷

『ボルベール 帰郷』 ペドロ・アルモドヴァル監督 DVD 邦題は微妙だと思う。ツタヤで女性映画のくくりで特集されていて、あれアルモドヴァルじゃんって。公開時期に忙しかったのか、全く気づかずに素通りした映画。で、借りてみた。すげー展開の早さ、やばす…

我が青春の二大巨匠夢の競演 「ブラックダリア」

そもそも映画を好きになったのは中学生の頃にブライアン・デ・パルマの「ミッション・インポッシブル」を観て、何か変だと感じてからかもしれない。ただのアクション映画を観に行ったはずが、デ・パルマ特有のカメラの変わった動かし方、何と言うか若干いや…

どこまで厳しいのか チェンジリング

待ちきれなくて初日に観てきました。クリント・イーストウッド『チェンジリング』。クリントはお世辞じゃなく、神の領域です。素晴らしい映画でした。お馴染みの青を基調とした、光と影の境界線がぼやけるフィルム、左右にゆったりと揺れるカメラ、そして妙…

サヨナラだけが人生だ 『スキヤキウエスタンジャンゴ』

三池崇史のスキヤキウエスタンジャンゴ観ました。この映画凄いよ。(B級アクション映画監督としての)黒澤明の正統派後継者は三池しかいないのではないかと真剣に思った。ていうと怒られるくらいの馬鹿映画ではあるが、でも、底流するスピリッツはかつて黒澤…

ベンジャミンバトン

昔読んだSF短編小説で、もうタイトルも作者も忘れてしまったが、時間を逆戻りで生きている女(一日一日の時間だけは順番通り)と、普通に生きている男の恋愛話というのがあって、これがすごく好きで何回も読み直した覚えがある。このお話のいたく切ないのは…

ハッシュ!ハッシュ!

先日縁あってとある友人のゲイが恋人と暮らす「愛の巣」にお邪魔しました。おしゃれで可愛いらしい素敵な部屋でした。お断りしますが僕はゲイではありません。どうして彼らはゲイになったのかということや、性同一性障害とは全く異なる地平にいるということ…

我が至上の愛 〜アストレとセラドン〜

エリックロメール86歳(or87歳?)当時に撮った、「最後の作品」という触れ込みの映画。2006年。以下ネタバレ注意。 アストレとセラドンのお話は有名なものであるらしい。17世紀にオノレ・デュルフェによって書かれたこの原作を僕は当然のごとく読んだことはな…

チェチェンへ アレクサンドラの旅

観ようか観まいか散々迷ったあげくに観た、観てしまったソクーロフ『チェチェンへ アレクサンドラの旅』。「太陽」以来の。ユーロスペース。 独語の応酬、いまひとつぴんとこない翻訳、どこまでも続く黄昏、歪曲した画面、すべてがいつも通りのソクーロフで…

小泉今日子の無表情 トウキョウソナタ

待望の黒沢清の新作。カンヌある視点グランプリ。有楽町ビックカメラの上の映画館で観てきた。家族崩壊というやや古典的な題材である。リストラされるお父さん、米国兵に志願するお兄さん、給食費を翳めとり、かなり不純な理由からピアノを習い始めるボク、…

I Love UK 『おろち』

久しぶりのユーロスペースで、「おろち」(2008 鶴田法男監督 原作 楳図かずお)観てきたけど、あまり楽しくなかった。楳図かずおの映画化はまあ難しいよね。主人公おろちはもっと可愛いキャラで描かなければいけなかったと思う。その点、木村佳乃の仮面のよ…

お台場に『アキレスと亀』を観に行ってきた。

「アキレスと亀」 監督・脚本・編集・挿入画/北野武 撮影/柳島克己 音楽/梶浦由記 配給/東京テアトル、オフィス北野 2008もう観てから少し時間が経ってしまいました。9月のある休みの日に、チケットの割引券の関係でわざわざお台場まで足を伸ばしました…

ハプニング

ネタバレ注意僕にとってシャマラン映画は概して不味い。しかし、青汁のようにもう一杯求めたくなる魅力ある不味さだ。これはまさしくB級映画の魅力だ。そんな彼の映画を今まで世間がA級映画と勘違いをし、老若男女楽しめる映画扱いをしてきてくれていたのは…

ダークナイト

本当は「ハプニング」を先に見たかったんだけど、予告編が妙に面白そうだったので先に見てしまった。前作「バットマン・ビギンズ」はやたらクールにまとめていて、何だか鼻につく感じだったからあまり期待してなかったんだけど、裏切られた。何と言ってもジ…

崖の上のポニョ

2年前にTVで製作開始ドキュメンタリーやってましたよね。宮崎さん格好いいなぁと思いながら個人的には2年待望していた作品。「スタジオジブリ」の名前が映るだけで拍手したくなった。これもまた祭りに近い。 宮崎演出は冴え渡っていて、そこらのアクション…

インディジョーンズ クリスタルスカルの王国

大好きなスピルバーグの最新作であるということ、しかも小さな頃、淀川長治の解説つきで胸ときめかせた(恥)インディ復活ということでお祭り気分で観に行ってきました。映画内容は、「ロスト・ワールド」を彷彿とさせる、「続編ってこんなんでよかったんだ…

ノーカントリー

コーエン兄弟の『No Country For Old Men』観て来た。勘はいいがやる気がいまひとつな主人公と殺人鬼の話という、何回も観たことがあるようなコーエン兄弟映画なので、何を今更騒いでいるのかという感じであるが、アクションに珍しく力を入れているところが…

もがりのもり

河瀬直美監督。2007年日=仏 忙しいとどうしても映画選べなくて、やっぱ話題性重視の映画選択になってしまいますね。こういう構図の定まらない映画が最近はもてはやされすぎでいる気がするんだけども、そういうのは古臭い映画ファンのやっかみととられてしま…

インテリア

やはりウディ・アレン監督。最初の静かな、珍しく沈黙の多いシークエンスがすごくよかった。この人は意外に沈黙したショットだけでもストーリーを見せる才能もあったのかと思ったが、結局そこからいつものお喋りになってしまうのは残念。しかし本人が出てこ…

アニー・ホール

「マッチ・ポイント」観に行こうと思って予習で観たのに、結局「マッチ・ポイント」観られなかった。ウディ・アレン監督のかなり私的でナルシスティックな映画。あまりナルシスティックでセンチメンタルなものでいけすかないのだが、どうもこの人の才能は、…

死刑台のエレベーター

ルイ・マル監督。マイルス・デイビスmeets映画という文脈でのみ語られてきた映画で、なんでだろうと思っていたが、観てちょっと判った気がする。キーとなる主人公二人の愛がこう、あまりにも説得力のない台詞と映像で、観てて恥ずかしかった。それからミステ…