映画

欲望

やはりアントニオーニ監督。なぜに欲望なのか、邦題がいまいち気にくわないが、今まで見てきたアントニオーニの中では一番個人的つぼだった。作風が違うというよりこの人のちょっとひねくれた構図の取り方は、イタリアよりもイギリスが似合っていたのではな…

やはりアントニオーニ。やりたいことはカサヴェテスのフェイセズと同じなのかもしれない。もしそうならフェイセズの方がいいと思う。ストーリー自体はものすごく格好いいのだが、手法としてあまり抽象的で客観的な風景ばかりを映すのが、ラストの主観的な不…

さすらい

ミケランジェロ・アントニオーニ監督。ラストは「回路」の元ネタなんだろうかと思った。ひょっとしたら黒沢清はアントニオーニに影響を受けている?本当にそう言い切っていいかどうかよくわかりませんが、この映画に限っては何となくそんな風情を感じた。シ…

非情城市

候考賢監督のやはり、ミニマムな描写で紡いだ大河。これもいい映画だしどのシーンも構図が素晴らしく好きなんだけど、どうしてもなぜそこを執拗に映してあちらを全く映さないかと気になるときがある。今までみたこの人の映画でもいつもたまにそういうことを…

アブラハム渓谷

つい先日、後輩たちに誘われて何か映画観ましょうと。彼らがいい映画を観たいと言ったので、DVD買ってはいたが、放置しておいたアブラハム渓谷を観ました。監督マノエル・ド・オリヴェイラ。僕は正直今までナレーション映画を馬鹿にしていました。しかしそれ…

太陽はひとりぼっち

今からもう六年前、昔住んでいた寮の、大先輩にあたる人が連れて行ってくれた早稲田のバーで、その教え子がマスターをやっているのだが、これがまた映画好きで、僕も映画好きなんですって言ったら貸してくれたのが「アントニオーニ 存在の証明」という本だっ…

硫黄島からの帰還

たまたまサークルの先輩に『硫黄島からの手紙』(イーストウッド)の大学内試写会の誘いをもらい、観に行きました。 その二日前に予習として『父親たちの星条旗』(イーストウッド)も観ました。 どっちも珍しく大勢の人たちを誘ったのです。 大勢連れて来て…

久しぶりです。

この一ヶ月は有言実行をモットーに映画を撮っていたため大変忙しく、ブログ書くのおろそかになってました。 本当はそういうときのブログこそ、心境の変化の緊迫感があって面白かったんでしょうが。HDVを使ったおかげでかなり綺麗な絵が撮れました。 皆様の評…

エスター・カーン めざめの時

初めてアルノー・デプレシャンの映画を観ました。トリュフォー的な、フランス映画的な皮肉と暗さに満ちた前半部分と、カサヴェテスの「オープニング・ナイト」と、ある種のハリウッド的なサクセス・ストーリーにオマージュを捧げたかのような後半部分とがは…

ローズ・イン・タイドランド

タイドランドのローズと訳して、不思議の国のアリスとの相似をなすかに見せかけて宣伝されている、この映画の実際のタイトルは単に「タイドランド」=干潟で、実際のところいつ果てるかわからないような悪夢が輪廻する、途中で席をたちたくなってしまう、い…

パルプ・フィクション

もう四回目くらい。色々一緒に見た人に語ってしまったが、冷静に考えるとこの映画の最も注目すべき点は、古今東西のB級映画を観まくった混沌としたタランティーノの頭の中が、奇跡的に整理されて全てが上手く機能しているように見える点なのだと思う。よく言…

勝手にしやがれ!!強奪計画

先月忙しくて、黒沢清特集いけなかったはらいせ。この人って本当映画好きなんだねぇ。どんなに陳腐な脚本で、どんなに低予算でも、楽しい映画は出来るんです。映画史上最悪のダメ医者も必見です。

パニック・ルーム

「セブン」や「ファイト・クラブ」に熱狂した高校の頃を思い出すと、こんな監督に騙されていたかと腹立たしくなってしまう。ジョディ・フォスターも仕事選ばなくなってロバート・デ・ニーロと同じ末路をたどるのか。間違えて三本セットとかで買ってしまったD…

地獄の逃避行

テレンス・マリックの「ニュー・ワールド」が割とよかったので、そういえばと思って探してみたら実は安売りしてたときに衝動買いして見ていなかった、「地獄の逃避行」を発見!いやー「キャリー」といいこれといい、僕は本当にシシー・スペイセクが大好きで…

東海道四谷怪談(中川信夫)

悪人田宮と、お岩の亡霊の徹底した対決という構図で、いかにも監督好みのテイストに仕上がっていた「怪談・お岩の亡霊」(加藤泰)に対して、こちらのお岩は艶やかで、静かで、ホラーだ。特にまだ殺されず、板に貼付けられる前の、岩の艶かしい動きを堪能し…

駅馬車

ハリウッドのアクション映画の「熱い」プロットはこの頃から十分完成されたものであり、一切の進歩は現在にいたるまでみられない。派手なアクションが増え、よりジェットコースターに近づき、緻密な画面構成や、照明の美しさといったものはむしろ衰退した。 …

素晴らしき放浪者

やはり新文芸坐で観ました。ジャン・ルノワールのコメディ。 冷笑的な社会批判コメディなんですが、そういった言葉から想像できないくらい構図がいいんです。 構図がいいと、映画はテンポを遅くしても全然観てられるというのが僕の感覚ですが、こういうコメ…

わが谷は緑なりき

新文芸坐で観ました。ジョン・フォードがアカデミー賞をとった名画。 まだまだ私にジョン・フォードを評するというようなことができうるはずもなく、 ただひたすらこの映画の美しさがどう担保されているのか考えるばかりでした。 まあ誰が観ても「いい映画」…

ニューワールド

映像が美しすぎて、全編予告編だったんじゃないかという感じの映画。何だか夢見ここちになった。ナレーションが大分と幼稚なのが、この映画の難点だ。きっと子供みたいな人なんじゃないか、テレンス・マリックって。 いずれにせよ、難しくなくて、美しい映像…

ラスト・デイズ

たとえこの映画がいかに多くの人に不快感を与えているとしても、いかにニルヴァーナファンから批判を受けているとしても、「エレファント」からさして監督のやり方に進歩が見られないとしても、ラストああいう終わり方はどうなんだ的議論になっているとして…

グッドナイト&グッドラック

マッカーシズムに真っ向から戦ったジャーナリスト、エドマローについての映画。実は今年二月のアメリカ帰りに飛行機の中で見ていました。自慢の賞味期限が切れる前に感想を。 別にそんなに取り立てて騒ぐ映画でもないとは思いますが、 アカデミーにも選ばれ…

隠された記憶

ミヒャエル・ハネケ映画祭で何本か観てきて、 この人は視聴者を絶望に追いやるというサディズムに徹底された監督だと思って、 いつも映画をみては不快な思いをしていました。 ただ前作の「ピアニスト」は(不快になりながらも少し、心地よい感じが)ちょっと…

ブロークン・フラワーズ

個人的につぼにはまって、久々に「男泣き」って感じの心境を味わいました。 よく考えれば(もう50代になった)ジャームッシュのナルシシズムが全開になった、 かなりいけすかない映画のようにも思いますが、 (宮崎駿の紅の豚のように) あまりそう客観的に…

ウォーク・ザ・ライン 君につづく道

やはり東京にいるはずはなかった三日間のあいだに、見た。テアトルタイムズスクエア。上まで行くと息が切れてしまうような映画館だ。窓から御苑が見下ろせる。 映画というよりも自分で歌まで歌っている主演のホアキン・フェニックスとリース・ウィザースプー…

「アワーミュージック」

昨年見逃していたゴダールの新作。シアターイメージフォーラムにて再演していたので行ってみた。 (いるはずのなかった東京の三日間のあいだに) ゴダール映画の物語などははっきり言って頭の弱い私にはさっぱり解らない。もっと言うと政治色が強いようであ…