グラン・トリノ/クリント・イーストウッド

これまた初日に観ました。いやー最高です。「これでもう映画に出ない」と公言したイーストウッドは見事に自らをフィルムの中に葬り去ったのです。その遺影、側方から青白い光が差し込み眼光が輝く、に涙を禁じ得ません。久々に男泣きでした。
以下、妄想ですが。イーストウッドを撮るという「技術」、これを発見したのはセルジオレオーネであり、ドンシーゲルでした。しかし、この2人から監督術を学んだイーストウッド本人が、何よりもこの技術をこそ、永年のテーマにしていたことはそのフィルモグラフィーから疑う余地もありません。自らを撮る監督はしばしばいますが、ここまで研究しつくされ磨き上げられた完成形はあとにも先にもイーストウッドしかありえない。それは果てしない客観性の極みであり、また老いとの戦いでもあったはずです。『グラン・トリノ』はまさにこの戦いの終止符・記念碑、俳優イーストウッドの「遺作」であるのです。一見偏屈爺にしか見えない冒頭から、表情が変化し、光が当たり、みるみる格好よくなっていく。ダーティハリーさながらの眼の輝きを取り戻す。ストーリー自体も感動的ながら、こういった背景がさらに涙をそそりました。そしてあのラスト!と、エンディングロール!これが映画だー!