偉大なるアンバーソン家の人々

eupketcha2009-09-05


前作でa citizenの人生丸ごとを(若干26歳にして)完全に掌握するかのような巨大な映画を作り上げたウェルズの「傲慢さ」は、その興行的惨敗と言う打撃を受けても尚とどまることなく肥大成長を続け、遂に若干27歳にしてfamily及び、馬車から自動車へと移行したあるgeneration全てを掌握するという試みに出るにいたったようだ。その映画こそが『偉大なるアンバーソン家の人々』であり、映画の中心には27歳が描いたとは思えない巨大な大河が置かれている。しかし残念ながらこの映画は、試写会の反応に恐怖したRKO社にずたぼろに切り刻まれたあげくに成功せず、ウェルズは次回作作成途中にスタジオ追放となる。
スタジオの命令で、4分間の舞踏会長回しなど貴重なシーンが削られてしまったのは実に残念なことだが、ウェルズらしい挑戦は例えば馬車の長回しのシーンなどで垣間みることができ、いかに実験的精神を持っていたかをうかがい知ることができる。(そのシーンが映画の中で効果的であったかどうかには疑問が残るが)そのウェルズの精神は、自動車事業に乗り出し成功を収めたジョセフコットン演じるイケメンにかぶさるようではあるが、ウェルズのたどった実際の道は、没落したアンバーソン家の「報酬」を受けるユージーンに近いのかもしれない。この映画に「時代の終焉」とともに課せられた大きなテーマは「報酬」である。
僕自身はこういう報酬がどうのとか言うキリスト教的な、神の視点で描かれたかのような映画は、そもそも鼻について好きになれない。試写会を見た観客が冗長と感じたのも何となく分かる気がする。個々の人間の描写も甘く感じられ、ウェルズの若さが垣間見える気もする。
なんて辛辣なことを思っている自分も27歳であり、こんなこと書いていると報酬を受ける日は近いのだろうか。次回『第三の男』