ノーカントリー

コーエン兄弟の『No Country For Old Men』観て来た。勘はいいがやる気がいまひとつな主人公と殺人鬼の話という、何回も観たことがあるようなコーエン兄弟映画なので、何を今更騒いでいるのかという感じであるが、アクションに珍しく力を入れているところが褒められているのに違いないと解釈している。
特に最初の三十分くらいの流れは、彼らの演出も落ち着き払ってきたものだと感心させられたが、後半はコーエン兄弟映画っぽいだるさに包まれてしまう。ウディハレルソンが出てこなければ、あるいはウディハレルソンの役がスティーブブセミならもっといい納まりを見せたのではないかと密かに思う。

コーエン兄弟の映画にはしばしば「殺人鬼」が舞台まわしとして登場してきた。バートンフィンクのジョングッドマンとか、ファーゴのストーメアとか。今回のバルデムにいたるまで共通する事項は、「お金を目的に殺しているはずが、いつの間にか殺す事が目的になっている」という点である。これは結局、西部劇的なアメリカの原風景がサイコたちによって塗りつぶされてきたという抽象と解釈しうる。考えても観れば既にコーエン兄弟の世代ですら子供の頃から近所にエドゲインがいるかもしれない恐怖があったわけだ。彼らの映画の舞台となる街は点々とするものの、結局はアメリカのどこまでいこうが、殺し屋から逃れる事は出来ない。(しかしメキシコまで行けば逃れられる)だからNo country for old men。こういう彼らの世界観が集結したとすれば、まあ代表作と言ってもいいのかもしれないな。