ハッシュ!ハッシュ!

 先日縁あってとある友人のゲイが恋人と暮らす「愛の巣」にお邪魔しました。おしゃれで可愛いらしい素敵な部屋でした。お断りしますが僕はゲイではありません。どうして彼らはゲイになったのかということや、性同一性障害とは全く異なる地平にいるということや、彼らの日常生活、苦しみ、家族観、大変興味深いお話を聞きました。どうもありがとう。
 その後、ゲイ映画なんて観たくないという感覚がどこかにあって避けていた「ハッシュ!橋口亮輔監督2001年を観ました。どこかトリュフォーを想起させる淡々としてしかし感傷的な視線が映画としても十分素晴らしいと思いましたが、その根底に渦巻く諸問題が、まさに僕が先日彼らの家で観た世界そのままであり、そのあまりの既視感に驚嘆しました。現実の2人と映画の2人が錯綜したのです。現実の2人は、もう付き合って3年くらいのようですが、これくらい長く続くというのは相当珍しいことのようです。映画でも「家族なんて一生ないものと思っていた」という台詞がありますが、一字一句同様の台詞を友人も語っていました。しかし今は「家族のようなもの」を感じているのですって!何かちょっと泣けました。
 映画と現実を錯綜させたもう一つの非常に興味深いエピソードは、実家について、特に父親についてのくだりです。詳細は伏せますが、僕の友人の父親は非常に「男らしい」人だったようで、「そのことが、今の自分につながっているか。」という僕の質問に「否定はできない。」と彼は言いました。映画の中で「ゲイ」と「父親」の関係性について明言はないのですが、その関連を示唆するようなシーンが挟み込まれ、それがクライマックスへつながっていきます。凄いなと思いました。
 全くその流れとは関係なく、「ハッシュ!」というDuke PearsonのHQDアルバムを購入しました。HQDはCDに特殊な合金を加工した新技術のようで、音の解像度のようなものが上がるのだそうです。しかし、それを結局iTunesMPEGに変換して聞いているので何やっているんだって感じですが。トゥートランペットという非常に珍しいQuintetで、右と左で異なるトランペットが聞こえてきます。表題曲ハッシュ!の冒頭などは目が覚めるように気持ちいいです。
 映画の主題歌 Hush Little Babyは、ボビーマクファーリンが歌ってヨーヨーマが伴奏していますが、これまた何とも言いようのないメロメロにHappyな歌で、頭から離れません。今日捜しにいこうかしら。しかし外は雨。

メモ:「ハッシュ!」の田口誠一の仕事は、絶対トリュフォーの「隣の女」の引用だと思う。片岡礼子のお父さんは寺田農で、タクシードライバーやっているので、これはもう相米の「ラブホテル」であることは揺るぎようがない。秋野暢子が演っていたような女の人は関西に本当に山のようにいると思う。それが素晴らしかった。