夜 [DVD]
 やはりアントニオーニ。やりたいことはカサヴェテスのフェイセズと同じなのかもしれない。もしそうならフェイセズの方がいいと思う。ストーリー自体はものすごく格好いいのだが、手法としてあまり抽象的で客観的な風景ばかりを映すのが、ラストの主観的な不毛感につながると言いたいところなのだろうことが、いまいちのれなかった原因であると思う。ラストの方で、朝になり、モニカ・ヴィッティが影になり、足を交叉させるショットはしかし物語の終焉を予感させる格好よさをひしひしと感じた。あのショットだけは。
 どうでもいいけど、このマストロヤンニのへの文字に結ばれた長く細くエレガントな唇と、少し犬のような傾斜を持つ上向きの顎が、上記アブラハム渓谷のあのシルヴェイラの美しい顔につながるのだと思うと感慨深い。