かぐや姫の物語

(ネタバレ注意)
竹取物語が原作というので一歩ひき、絵のタッチがああいう風だというので一歩ひき、上映時間が2時間を越えるというだけでまた一歩ひき、宮崎映画は好きだが、高畑映画はちょっと、、とまたまた一歩ひいてしまっていたが、評判がいいので、観に行ってみたら、これが評判通りとんでもなくよくて、案の定涙が出て、しばらく声を発するのがためらわれた。どうしてどうして、展開のテンポがよくて、あの絵のタッチが妙にはまっていて、そして竹取物語もこういう風な解釈をして見ると、というかあの貪欲なまでの牧歌性を繰り広げた最初の田舎暮らしのシーンを付け添えただけで、(というか翁の声が地位武夫さんというだけでもそれはそれで泣きそうになるのだがいやそういうことだけでなく、)なるほど、この劇的なまでに荒唐無稽なあの知り尽くされたラストシーンが、あそこまで異様な悲哀を感じさせるのかと思うと、これはもの凄い発見だ、よくやってくれたなと思う訳です。そして何だあのお迎え軍団の異様さは、リオか、サンバか!これは怖い、怖過ぎる、そしてそれは勝てないよ!無力を一瞬で感じた!あの絶望感、あれに泣かされた!そして振り向き様に何かを思い出して見る地球!これは絶対平安人は思いつかなかった!振り向いたら夜でも地球は月の輝きで青いのだ!そしてあそこには帰れない!この絶望感はゼログラビティに匹敵、いや勝ってる!興奮冷めやらぬまま、パンフを読むと、妙に鈴木さんの口調が冷たい、、、。明らかに風立ちぬのときと違う。どうも高畑さんは頑固を貫いてプロデューサーを困らせ果ててこの映画を作り通したらしい。宮さんは引退宣言をしたが、まだ戻ってくるかもしれないとも思う。しかし高畑さんは本当にもう無理なんだろうなと思う。そういう思いで見るとまた泣けた。しかし、30代前半で、こんなんに泣いてていいのかって自分がちょっと不安にもなる。

2014年01月02日のツイート

ゼロ・グラビティ

(ネタバレ注意)
アルフォンソ・キュアロン監督の映画 2013年12月31日 銀座で。原題はgravityなので、zeroはつかない なぜzeroをつけたのか ということはどうでもいいが どうしてgravityという無機質なタイトルでよかったのか、もう少し誰か英語の詳しい向きに掘り下げてもらいたいところではあるが、何と言うか、このタイトルは映画の内容に比してクール過ぎないかと思う。君はもう少し熱い思いでこの映画を撮ったのではないかと監督に聞いて見たい。アルフォンソ・キュアロンがどのような人物か私は知る由もないが、こんな映画を撮るんだから余程熱く、映画のメソドロジーを毎日毎日考えているに違いないと予想する。冒頭13分の長回し、画面の動きに併せた呼吸があまりに計算され尽くして、ちょっと笑えてしまうくらいだ。余談だが、この冒頭で地球にカメラが向くことでショット展開させるのはヒッチコックのロープで背中が出てくるのと一緒と思うと、背中から地球になったかと、時代の変遷に感慨深いものを感じてしまう。その長閑な冒頭長回しが終わると、もう最後まで息をつかせないのであるが、そのシークエンスは総て長回しあるいは類長回しでつなげていく。その冒険に、熱い思いを感じずにはいられない。最後のシーンでこれを撮りたかったからかという感じのシーンを出してまたタイトルが出てくるが、とてもこれだけの映画とは思えなかった。技術は素晴らしいし、才能が有り余っているが、強いていえばそういうクールぶってしまうところが弱点なのではないかとも思われる。思想的な弱さと言うか。ただ、もう観る価値は高く、非常に面白く、もう一度(3Dでなくても)よく見直してみたいと思った。次回以降どのような作品を作って行くのか、往年のヒッチコックの様に、サイコの様な映画を作って行くのかどうか、今後が気になる映画監督であることも間違いはない。

2013年08月10日のツイート

「風立ちぬ」

記録的猛暑の中、ついに観て来た、「風立ちぬ」。本当に素晴らしい映画だった。何度も涙腺がゆるみ、鑑賞後席をなかなか立てなかった。演出も脚本も、素晴らしく、非の打ち所があまり感じられなかった。これで、面白くないと言う人が結構まわりにいるし、世の中にもいると聞くから、人間の感性の違いには本当に驚かされる。

印象としては、こういう人たちは、何か映画に期待しているものが違う様に思う。こういった人たちを説得するのにはほとほと疲れた。こうして映画は死ぬという絶望論は生まれるんだと思う。

宮崎アニメはこれまでも映画らしい雰囲気をつねに保ち続けてきたが、今回はとりわけ映画的である。実に伏線をうまく張り、過剰な説明を避け、偶然を多いに利用し、「夢」を楽しんでいる。壮大なものを感じさせつつ、多くを観客の創造に身を任せて、一気に潔く幕を引く。これで物足りないという人は、2時間でものごとをまとめるという作業に対して、想像力がなさすぎるのではないだろうか。

紙飛行機を含め、様々な飛行機が、風に乗って舞っていた。これは堀越二郎の夢とカプローニの夢に載せた宮崎駿の夢に相違なかろう。色んな人が言っているが70になってこんな仕事できるなんて本当に凄い。人間、創造力をもって仕事ができるのは人生のうち10年くらい、でもその10年はいつ来るかは判らないと宮さんは言う。明日からも頑張って生きてゆかねばならない。そう思わされた。

2013年07月26日のツイート

2013年06月22日のツイート