「風立ちぬ」

記録的猛暑の中、ついに観て来た、「風立ちぬ」。本当に素晴らしい映画だった。何度も涙腺がゆるみ、鑑賞後席をなかなか立てなかった。演出も脚本も、素晴らしく、非の打ち所があまり感じられなかった。これで、面白くないと言う人が結構まわりにいるし、世の中にもいると聞くから、人間の感性の違いには本当に驚かされる。

印象としては、こういう人たちは、何か映画に期待しているものが違う様に思う。こういった人たちを説得するのにはほとほと疲れた。こうして映画は死ぬという絶望論は生まれるんだと思う。

宮崎アニメはこれまでも映画らしい雰囲気をつねに保ち続けてきたが、今回はとりわけ映画的である。実に伏線をうまく張り、過剰な説明を避け、偶然を多いに利用し、「夢」を楽しんでいる。壮大なものを感じさせつつ、多くを観客の創造に身を任せて、一気に潔く幕を引く。これで物足りないという人は、2時間でものごとをまとめるという作業に対して、想像力がなさすぎるのではないだろうか。

紙飛行機を含め、様々な飛行機が、風に乗って舞っていた。これは堀越二郎の夢とカプローニの夢に載せた宮崎駿の夢に相違なかろう。色んな人が言っているが70になってこんな仕事できるなんて本当に凄い。人間、創造力をもって仕事ができるのは人生のうち10年くらい、でもその10年はいつ来るかは判らないと宮さんは言う。明日からも頑張って生きてゆかねばならない。そう思わされた。