かぐや姫の物語

(ネタバレ注意)
竹取物語が原作というので一歩ひき、絵のタッチがああいう風だというので一歩ひき、上映時間が2時間を越えるというだけでまた一歩ひき、宮崎映画は好きだが、高畑映画はちょっと、、とまたまた一歩ひいてしまっていたが、評判がいいので、観に行ってみたら、これが評判通りとんでもなくよくて、案の定涙が出て、しばらく声を発するのがためらわれた。どうしてどうして、展開のテンポがよくて、あの絵のタッチが妙にはまっていて、そして竹取物語もこういう風な解釈をして見ると、というかあの貪欲なまでの牧歌性を繰り広げた最初の田舎暮らしのシーンを付け添えただけで、(というか翁の声が地位武夫さんというだけでもそれはそれで泣きそうになるのだがいやそういうことだけでなく、)なるほど、この劇的なまでに荒唐無稽なあの知り尽くされたラストシーンが、あそこまで異様な悲哀を感じさせるのかと思うと、これはもの凄い発見だ、よくやってくれたなと思う訳です。そして何だあのお迎え軍団の異様さは、リオか、サンバか!これは怖い、怖過ぎる、そしてそれは勝てないよ!無力を一瞬で感じた!あの絶望感、あれに泣かされた!そして振り向き様に何かを思い出して見る地球!これは絶対平安人は思いつかなかった!振り向いたら夜でも地球は月の輝きで青いのだ!そしてあそこには帰れない!この絶望感はゼログラビティに匹敵、いや勝ってる!興奮冷めやらぬまま、パンフを読むと、妙に鈴木さんの口調が冷たい、、、。明らかに風立ちぬのときと違う。どうも高畑さんは頑固を貫いてプロデューサーを困らせ果ててこの映画を作り通したらしい。宮さんは引退宣言をしたが、まだ戻ってくるかもしれないとも思う。しかし高畑さんは本当にもう無理なんだろうなと思う。そういう思いで見るとまた泣けた。しかし、30代前半で、こんなんに泣いてていいのかって自分がちょっと不安にもなる。