体重計

 ふと気付くと、三井住友VISAカードをちょくちょく使って貯めて来た、名前だけは壮大なワールドプレゼントポイントちゃんが、先月あたりから6ポイントづつくらい、期限切れで消えて行っているのだった。私は世界に対して無神経であった。相手にされないと寂しくて、少しづつ少しづつ束になって逃げていってしまう。待って、そこの小さな世界ちゃん。
 

 で、2000点分使って昔年の葛藤を乗り越えボディイメージを矯正すべく、OMRONの体重と体脂肪率と内臓脂肪レベルまで測定できるKarada Scan 903を注文した。一週間とかからず佐川急便の筋骨隆々としたお兄ちゃんが運んで来た。箱の正面には小麦色に焼けた、臍を出した、プロポーションのいい女の人の鼻の下の人中から腰のベルトまでの写真が映されている。目の部分は敢えて隠して没個性を演出し、買った人への焦燥感を煽るというのはいささか犯罪的だと感じた。早速測定開始。


 体脂肪率は、体の中の水分量とかに依存しているらしく、それゆえに日内変動してしまうらしい。2時間後に体脂肪率が2%くらいあがって、このペースで体の脂肪が増殖していくと爆発するんじゃないかとぞっとした。しかし、体の水分に左右されるということは、食事とか飲料とか排泄とかで左右されてしまうんだから、なかなかコントロールの状態をつくるのが難しいなぁ。一体どういう時間帯に定点観測するのが適切なのか。それとも、機械を神格化して、「今日は18とおっしゃっておられる。昨日は15とおっしゃれられていたのに。これは昨日食べ過ぎた天罰じゃ。なんまいだぶなんまいだぶ。」といった馬鹿騒ぎをしろということか。


「内臓脂肪レベル」というのも測定の最後にどどーんと、神託のように表示されるが一体どういうカラクリかわからない。単に年齢、身長、体重で推測しているのか。30段階で4だったから、メタボリックはないと考えていいの?計測方法の理論・理屈を細かい実験データとかと併せて説明書に書いておいてほしいな。少なくとも僕はそれで理解しますよ。臨床医学の世界でも内臓脂肪の計測法は腹囲を測っているご時世なのに、この機械は台にのぼって、子機を握り、体の前方にそれを突き出すだけで測定してくれるのである。神秘的だ。


 神託はくだった。体脂肪率18%。汝はこの一月というもの体脂肪を減らす努力を怠ったのだ。さあ、その冬の口どけポッキーを、サンクスの菓子パンを、排骨担々麺を、某大学の地下室で毎週月曜の事務さんがサービスで買って来てくれるあのおやつを、控えなさい。身の程を知りなさい。さあ、早く!!ボディイメージを矯正するはずが、再び摂食障害のスパイラルに飲み込まれそうです。