Let's get a 下駄

小児科の試験がわずかに6割に届いていない私はそれはもう必死になって下駄を探したのでございます。


あのー、このあたりに誰にでも下駄を授けてくださるという噂の大変ありがたいおひとがいはると小耳にはさんだんやが、いったいどこにいはるんでしょうか?
わたし、それがないと試験落ちてしまいますねん。
わたし、下駄がほしいねん。
わたし、下駄ないと、もうあかんねん。
だれか下駄ゆずってくれはらしまへんやろか。


すると通りの向こうの方から、石畳を打つ微かな乾いた音が聞こえてきました。
からん、ころん、からんころんから。
間違いない下駄や。
わたしは霧の中を無我夢中で駆け出しました。
下駄や、下駄くれ、下駄がほしい。


からんころんからんころんからんころん


するとそこにいたのはゲゲゲの鬼太郎でした。
というよりも鬼太郎の格好をしたウエンツでした。
ウエンツは言いました。
「あの試験はつまり、HbA1cなのよ。前日だけダイエットしても無駄なのよ。」


ウエンツは下駄を置いて行きました。
下駄は妖気を発していました。
私は下駄をはきました。
下駄はあまりにも重くて、僕は一歩も進むことはできません。
そればかりか、下駄周囲半径1mの地盤がその重みに耐えかねてじんわりと沈下していくではないですか。


慌てて下駄を脱ごうとする。
すると周囲はいつのまにか真っ暗でした。
そして私のまわりを恐ろしい顔をした鬼たちが走り抜けて行きます。
どうやら百鬼夜行の夜らしい。
でも下駄の妖気で周囲には近づけないようだ。


下駄を脱ぐと私は鬼に喰われる。
下駄をはいたままではそのまま沈んで行く。
こんな下駄はくんじゃなかった。
周りを赤や青や色とりどりの鬼達が流れて行くのをうっとりと眺めながら私は沈みました。
もうすっかり体全体が穴の中に隠れました。
上からは土が降ってくる。
わずかに月光がさしているのが見える。
それもだんだん小さくなって。