沖縄礼賛2

eupketcha2006-08-29

フロントにいたのはまた別の男だが、体型も喋り方もそっくりで、私の期待を裏切らない。一泊2800円というのは、ゲストハウスと比べると高いようであるが、駐車場はあるし、朝飯は付くし、漫画は読み放題、DVD見放題、風呂付きとなれば、そこそこなんではないだろうか。いずれにせよ、泡盛が飲みたかったので、荷物だけ置いてすぐに夜の国際通りに繰り出す。途端、どしゃぶりの雨の洗礼。ここは紛れもなくアジアだ。


彷徨う。意外に店があいてない。若者がバイクに乗って走り回っている。地べたでも飲んでいたりする。誰かとしゃべりたいけどこの人たちは疲れるかなとか考えながら、30分くらいふらついて、屋台村の串カツ屋に入った。客は他にはいないようだ。
「一番美味しい泡盛ください。」
出て来た菊の露をうまいっすと飲みながら二時間くらい串カツ屋のおばさんとしゃべった。やはり最近お客さんが減ったみたい。ちょっと前は朝まで客が絶えなかったのに。しかし、よく毎日朝まで一人で切り盛りしているもんだ。
「こんな音楽聞かないでしょう。」
おばさんが、折角の琉球民謡を、聴いた事もない歌謡曲に変えてしまった。
「いや、民謡がよかったのに。」
おばさんは笑って、気を使わなくていいんだよと流す。全然気を使ってなどいないんだがな。島では若者が琉球民謡を聴くのはあまり一般的ではないようで、島の病院でお年寄りを手術するとき、最初は琉球民謡かけるんだけど、麻酔が効くやいなや、すぐにその音楽をポップなやつに変えるんだって(あとできいた話)。伝統的な音楽が聴きたいというのは所詮旅行者の傲慢か。沖縄だけは違うという思いは幻想にすぎなかった。
「最近、足がむくむんだよ。どうしたらいいかね。」
いつのまにか、医学生ということがばれている。
「立ちっぱなしはよくないよ。」
当たり障りのないことしか言えない、泡盛が大好きな、ダメ医学生
「来年は彼女を連れてくるんだよ。」
余計な心配までさせてしまった。



店を出て、おばさんのものまねをしながらホテルまで帰った。沖縄風のイントネーションでしゃべりたくて沖縄に毎回来ているといっても過言ではない。沖縄のイントネーションはどこか優しくて、嫌味なく嫌らしいことがしゃべれるのが特徴と思う。どうもいつもうまくまねできない。ひょっとしたら法則がないのではないかとすら思う。いや、法則があるにはあるが、皆どこか好き勝手にその法則を外す部分があって、なんとなく似てはいるけども十人十色であるような気がする。それがなんともいえない、つたない、素朴な感じを生み出しているのではないだろうか。そしてそれは丁度、三線という楽器の自由度の高さに相関している気がする。すっかり酔った。酔っぱらった。案の定ではあるが、カプセルは鍵がかけられない。宇宙船の寝室みたいなところにすっぽり納まって、ふとくつろぐと急に例の事件を思い出して血の気が引いた。隣の男の寝息が、カプセルとはいえ、聞こえて来る。朝からの運転に向けて頑張って寝る。8/25 午前四時

つづく