沖縄礼賛1

沖縄に行ってきた。四回目となる今回は沖縄の某有名研修病院に就職した先輩と、その奥様に会いに行くことをメインに、さらにはその病院の就職試験で沖縄入りしているクラスメートと合流して那覇で飲むというおまけをつけて、二日間という短期間ながら実に充実した旅行だった。

夜のフライト

飲料、食料、音楽、映画、雑誌、新聞などのサービスなし、徹底的に節約して航行する去年から始まったらしいスカイマークの深夜便を利用した。このシーズンなのに二日前にチケットをとれたのはかなり意外だった。沖縄人気も下火なのか。しかも前割席に偶然キャンセルが出たのをネットでタイミングよくゲット。片道18500円(この時期にしてはこれでも破格)で行けた。正直このチケットがなければ行かなかったかもしれない。23:30沖縄着。すでにモノレールは終わっているので、ここからの足は、深夜便対応のABCレンタカーを利用した。

国際通りのカプセルホテルの星を見上げる従業員

国内旅行でカプセルホテルをはじめて利用したのは松山に行ったときだ。なんともいえない場末感と、意外な居心地の良さが気に入ったので、今回も何気なくカプセルホテルをとったが、ここはつい最近、例のライブドアの重役が自殺したか他殺されたかの場所だということに予約してから気づいた。大体沖縄にはカプセルホテルがここしかないらしい。あまりいい気持ちはしなかったが、ある意味僕らしいのではないかと、よく分からない正当化をした。三台くらいしかとめられない駐車場に、頑張って慣れない後進駐車をした。ドアを開けると、いつのまにか従業員がすぐそばに立っていて早速気味が悪かった。身構えたが、男の開口一番のセリフに腰が抜けた。どうやらとてもいい人らしい。
「今夜は星が奇麗ですよ。」
「え?」
「ほら」
満天の星が広がる。しばらく二人でぼおっと空を見上げた
「明日は晴れるそうです。」
「そ、そうですか。そりゃよかった。」
「よかったですね。」
ふと車を見てみると、わずかに柱に当たっていた。
「あっ、当たってますね。」
「傷ついたでしょうか。」
「さあ、わかりません。ただこのままだとさらに傷ついてしまう可能性が高いので、少し前に出してください。」
「はい。」
「あ、お客様。クリープで前に進めた方がいいですよ。」(店員、ハンドルを回すようなジェスチャー
「は、はい。」
指示とおりクリープ。幸い傷ついていなかった。
「よかったー。」
「それではお客様、お荷物を持って前におまわりください。」
「はい。」
「あ、私がお持ちしましょうか?」
「い、いやいいです。」(動揺)「あっ」
荷物を落としてしまった。チャックが開いたままで、中身が飛び出した。
「あー大変だ。」
「すいません。」
「やっぱり私が運びましょうか。」
「いや、大丈夫です。」
「本当にいいんですか。」
「いや、大丈夫です。」
「そうですか。」
従業員は暗闇に去っていた。痩せてか細い声でしゃべる男だった。普通のホテルの従業員には絶対に感じられない負のイメージと、緩い感じがたまらない。やはりカプセルにしてよかった。いい旅の始まりの予感だ。私は意気揚々と表にまわり、ホテルのフロントへ駆け上がる。

つづく