エスケーピズム万歳!

エスケーピズム(逃避主義)というまことに有り難い言葉があるらしい。モラトリアムよりずっと何か正当化の度合いが強くていいね。エスケープも立派な思想ですから。私エスケーピストですから。というわけで旅に出ました。


といっても部活の旅行だったりするんですが、ちょっと色々訳ありで、行きも帰りも単独行動。もう六年生ですから。旅は一人でするものですから。私、エスケーピストですから。


隠れるって言葉好きです。語感もいい。もっと日常に隠れるを。
「今日、ちょっと隠れさせてもらっていいですか。」
「そうか、しっかり隠れてこい。」
探さないでくださいとよく言うけど、探してもいいけど見つけないでねっていうのが「隠れる」の真骨頂ですね。見つけられるんじゃないかというスリルとか。まったく探すなと言い切れない淋しがり屋の性というか。


不景気の中、バナナワニ園が、シャボテン公園が、サイテルが生き残ってこれたという事実は、都心から近く、しかし適当に遊ぶ場所が散乱し、山や海がある、まさに「隠れる」に最適な伊豆半島という土地に、東京に渦巻く巨大なエスケーピズムが連綿と注がれてきたという証拠ではないでしょうか。そしてこれは北ヨーロッパ人が長時間かけて南に向かう「バカンス」などとは明らかに異質だということに早晩気づくでしょう。だって伊豆半島ですからね。バカンスじゃないですよね。悪いけど。


日本人は「ちょっと隠れたい」人たちなんだと。だから宮崎シーワールドではなく、バナナワニ園なんです。このへんを理解しないと日本のリゾート業は失敗する。間違いない。エスケーピズム万歳。さあ次はどこに隠れようかなっと。