プロメテウス

エイリアンとブレードランナーはやはり凄いと思うが、それ以降のリドリースコットに今一つピンと来るものはなかった。印象でしかないが、どうも色の使い方が好きになれなくて、歴史ものでも妙に金属的な青が重なっていて、どうもしっくりと来ていないなと思っていた。しかし、このプロメテウスは久々に、無機質で金属的な世界をとらえているせいか、何と言うかこの無機質な青が妙にしっくりと来ている。
この映画、全く知識なく見たが、でもどう考えてもあの「エイリアン」前夜の話の様だ。まずタイトルが、一筆一筆登場するあたりから、エイリアンのオープニングと一緒だ。HRギーガーのデザインも大活躍だ。Wikipediaにも書いてあるが、エイリアン前夜のつもりでそもそも書かれた脚本だが、悪?のりして、人類誕生まで結びつけてしまったらしい。エイリアンと人間のルーツが同じだなんてまるで、ウルトラマンとバルタン星人がどちらもセミ人間から産まれました的な、とんでもなくB級くさい話なのだが、これをA級哲学大作のように作り上げてしまったところにこの映画の奇妙さ、あるいは違和感の最大点はあると思う。リドリースコットという監督の立ち位置が、あのエイリアンを作り上げた頃とは完全に変わってしまったことということだろう。ブラックホークダウンとかグラディエーターとかを撮ったあとに、今更エイリアンには戻れないのだろう。
まあともかく、無機質な青の話にもどれば、内容の不気味さや絶望感とあいまって、しかもショパンまで流して、実にグロテスクであった。非常にいいなと思ったのはアンドロイドをやっている俳優さんだ。どう見ても人間の見た目だが、一挙手一投足、機械のようにしか見えない。その不気味な笑みには心の底から凍り付く。そして、この映画最後の方にうってかわってとても美しい青い空が出てくるショットがあって、このギャップに心打たれた。あるいは絶望した。あそこにあの青を持ってくるのは非常にうまいと思う。あのアンドロイドと美しい青い空を見れただけでも、この映画は見る価値があったと思う。