揺れる北極

今年の春は寒すぎる 皆さんご存じのように。もう花見でうかれたのは当に昔のことだろう でもあの頃も寒かった 何この異常気象!?原因、北極が揺れているからだという。
誰が呼んだか 北極振動。今年は北極振動係数が負に振れているため、ジェット気流が発生し、低気圧が日本に流れ込むのだとか。
何だかわかったようでわからない話だ。じゃあ誰が北極振動を負にするなんて迷惑なことをしてくださっているのか というと これは世界中誰も分かっていないという。
太陽のせいかもしれないという。海温のせいかもしれないという。
原因がわからないというと、対策もとりようがない。無論、原因がわかっても、天気のことはどうしようもない。だから北極振動なんていう言葉には一部の専門家以外意味はない。
それでも、「北極振動」という言葉が降りてくるだけで、私は、あるいは多くの人々は、なぜか納得した気になる。
北極が揺れているならしょうがないじゃないか。北極にも揺れたくなるときはあるさ。さあ暖かいものを着て春を生きよう。

名前をつけるのはホモサピエンスの持つ恐怖と戦う、非常に安価な「武器」なのかもしれないとふと思った。
例えが悪いかも知れないけど、体の向きを変えると強いめまいに襲われる病気がある。めまいがひどいと立っていられなくなり、激しい吐き気に襲われたりするわけで非常に恐ろしい
しかし、この病気にはいい名前がついている その名も「良性発作性頭位変換性めまい症」だ。
何とも怖くなさそうな病気じゃない?わざわざ良性とか言っちゃってさ。
でも原因がよくわかってないし、おまじないのように頭を運動させる治療法しかない(これ意外に効くらしいんだけども)
ある意味原因不明の難病であるには違いないが、「死にはしないよ」程度の意味で「良性」ってついているのである
しかし、これである程度は安心するわけである。死の恐怖からは逃れられる
事実、この病気の人は勝手に治るので、医師にできることといったら、おまじないのような対症療法と、こういう病気ですよと説明することだけなのだが、それでも異様に感謝されたこともあります。

医師にしろ、気象予報士にしろ、名前をつけるというのは強大な力だ きっと世の指導者も名前を付けることで権力を獲得してきたに違いない
「ああ、指導者様、あの恐ろしい音と光は何なのですか!」
「あれは神が怒っていらっしゃるのだ、だから、かみなりというのだ!」
「おおーっ、かみなり!!さすがは指導者様だ、何でも知っていらっしゃる。ありがたやありがたや」
そんな妄想にふけっていると、東の空はかきくもり、また温度が下がって寒気がする。今日もまた北極が揺れているらしい でも怖くないぞ 俺はお前のことをこんなにも理解しているからな。