太陽 (ソクーロフ)

あの銀座シネパトスが盛況である。ちょっと話題のB級映画を発掘したり、素敵な昭和映画を上映したり、ロマンポルノ映画祭をやったり、うらぶれた感覚がたまらない、映画を観ていたら地下鉄の音が聞こえて来る、マニアむけの銀座シネパトスに、行列ができているのは驚きだ。スタッフもあまり慣れていない感じが初々しくて楽しい。


ラストシーンがあまりにここちよかったのでソクーロフとしては珍しくプッシュしたくなる映画だった。基本的に生のフィルムを好まず、特殊なレンズやフィルターを使って、粗くゆらゆらと色調薄く、あまりドラマチックでなく展開するソクーロフの映像に、いつも眠くなっていた僕は、勝手にこの人はきっと映画が嫌いなんだと断定していたが、今回はその手法が妙に生き生きとしているように見えたし、割とドラマチックだった。それは単純に言語が親しいだけかもしれないし、イッセー尾形の演技が魅力的なのかもしれない。特に役者がアドリブをしている感じがあるというのはソクーロフ映画のいままでにない様な気がして、新鮮だった。途中で入った夢に観る東京大空襲シーンのCGは実に気合が入っていた。それから皇居の建物、防空壕から、東京の廃墟とか全てが、絶妙にロシアというかソ連、(あるいはレンフィルム)の暗さを秘めていた。そんに暗くないだろとつっこみつつ、違和感を通りこしてこんな日本があったらいいなとふと思った。