パニック映画というジャンルは

しょうがなく「ポセイドン」

断言してしまえばスピルバーグが「宇宙戦争」で終止符を打ったと思う。少なくともこれ以上いいパニック映画は今後十数年単位で出てこないと思うのでもう二度と見ないと思っていたが、親父上京のみぎり六本木で映画を見ることになって、「ダヴィンチ・コードは姉と見るからだめ」とか言って、まさか親父と「嫌われ松子」を見る訳にもいかんので、「ポセイドン」を見る羽目になった。

期待した僕が馬鹿

そうかヴォルフガング・ペーターゼンならまだ面白いかもしれない。彼はドイツから「Uボート」でハリウッドに乗り込んで以来、うん十年とパニック映画ばかり作り上げてきた職人だから(なんでそんなことをしているのかは全く理解に苦しむが)、きっとうまいに違いない。そうはじめは期待したが、見事に裏切られた。この男は自分の産まれた国が、かつて映画大国だったことにかけらも誇りに思っていないに違いない。これでは元の「ポセイドン・アドベンチャー」の方がよっぽど面白かったじゃないか。

怒り

パニック映画に絶対的に必要なのは、CGでも、けたたましい音楽でも、遊園地のアトラクションのような炎でも、家族愛でも、超人的ヒーローでもなくて、パニック状態に陥ったときの人間の行動に対する洞察だ。誰一人狂わず、みんな泳ぐのがやたらとお上手で、皮肉を言ったり、愚痴を言ったりしない。誰が死んで誰が死なないかはっきりしていて、とりあえず助かったらわーいよかったみたいな、何百の死体を乗り越えてもファイト一発!みたいな。そんなパニック映画見て何が楽しいのか。遊園地いけ!ジェットコースターでも乗ってろ!

ちょっと冷静に

ま、儲かるんだろうね。こういう映画作ると。それで映画産業成り立ってるんだもんね。しょうがないよね。うんうん。ごめんね。これからも頑張ってね。もう僕は見ないけど。しかしスピルバーグ以外に、ちゃんとしたパニック映画撮れる人は本当にいないんだろうか。サム・ライミあたりが作ってくれないだろうか。あるいは、ジョン・カーペンター御大お願いします。

話は変わるが

夜の六本木の映画館は華やかな男女で溢れる。これがヒルズ族という輩か。まったく田舎者親子の出る幕はなかった。(そういえば、昔好きだった人とこのへん散歩したっけ。)周囲の華やかさと、我々親子のだめっぷりから、変な感情の流れにスイッチが入ってしまった。徹底的に親父に映画について管を巻いた。親父はこういうハリウッド的娯楽映画が大好きなので、僕の批判に不服そうだったが、映画についてどうのこうの親父に言わせる余裕は、今日の僕にはなかった。


ちゃっかりタクシー代は頂戴して、皇居をぐるっとまわって帰った。霞ヶ関から丸の内へ、夜の巨大ビル群が右手後方へ流れて行く。振り返れば東京タワー。そういえばこういう「東京」たちに憧れて上京してきたものだ。六年もいたのにどこにだってたどり着いていない。